つきとかげちゃん
2006.5

■ つきとかげちゃん






暗い夜空に つきは一人ぼっちです。
つきは 友達をさがすことにしました。

「どこかに いい子はいないかな」






つきは 山へ行きました。


動物たちは眠っていました。
草も木も眠っていました。

フクロウじいさんは起きていましたが、
なにやら むずかしそうな顔をしています。

「フクロウさん フクロウさん。
ぼくとお友達になってくれませんか?」

「わたしは研究中なんだ。遊んでる暇なんてないよ。」






つきは 町に行きました。

人間たちは眠っていました。
電車も車も眠っていました。

信号は起きていましたが、
誰もいない道路で チカチカと忙しそうでした。

「信号さん 信号さん。
ぼくとお友達になってくれませんか?」

「僕は仕事中なんだ。悪いけど他をあたってくれ。」






つきは 夜空を見上げました。

こんなにたくさんの星がいるのに、
星の声は小さくて
つきとはお話できません。

つきは やっぱり一人ぼっち。
「あ〜あ」
つきは ため息をついて、
電線の上に頬杖をつきました。



そのときです。
「あ〜あ」
女の子のため息が聞こえました。
下の公園からです。


「だれ?誰かいるの?」

「あなたこそだあれ?」

つきは 一生懸命探しましたが
女の子の姿が見つけられません。

「隠れていないで 出ておいでよ!」
「隠れてなんていないわ
あなたがまぶしすぎるのよ」




「わたし カゲなの」

よく目を凝らしてみると、
滑り台の下に
小さな女の子のカゲができていました


「夕方までみんなと一緒に遊んでたんだけど
もっともっと遊んでいたくてここに残ったの。
でも 一人ぼっちじゃちっとも面白くないのね。」




「そうだったの!ぼくとおんなじだ。」

つきはうれしくなって、
電線の上でぼよんぼよんととびはねました。

「ねぇ きみ!
ぼくとお友達にならない?」

「本当!うれしい!」

女の子のカゲも
うれしそうにぴょこぴょこととびはねました。




「さあて。何をして遊ぼうか!」

つきはおおはりきりです。
「何をする?」
「……えっと…」

つきは困ってしまいました。
だってお友達はこの子が初めてなんですもの。
遊んだことなんて、今まで一度もありません。

「どうしたの?」

滑り台の上で、女の子が待っています。

「ええっとねぇ…どうしようかなぁ、
あれがいいかなぁ…」


つきはいっしょうけんめいかんがえました。

だって、遊び方を何も知らないなんてわかったら、
お友達でいてくれなくなってしまうかもしれません。




「あはは!おもしろいかお!」

とつぜん女の子が笑いました。


「ぼくのかお、おもしろい?」
「おもしろい、おもしろい!
でもあたし、もっとおもしろい顔ができるんだ。
ねぇ、にらめっこをしましょうよ」
「にらめっこ?
ああ!いいね、そうしようそうしよう!」

つきはあわててうんうんとあたまをふりました。




「じゃあ、いくわよ。
にらめっこしましょ
わらうとまけよ
あっぷっぷ!」



「あははははは!ひどいかお!」
つきは大笑いで、空中をころげまわりました。


「は〜い!あんたのまけ〜」
「え?負けたの?どうして?」
「だってにらめっこよ?
わらったらまけなんだから。
…わかった!
あんたにらめっこしらないのね?」


女の子はびっくりした顔をしています。


つきはドキッとしました。

あんなに楽しかった気持ちが
みるみるしぼんでいきます。

あそびかたを何にも知らないってことが
女の子にばれてしまったからです。
きっともういっしょにあそんでもらえません。







「ごめんね。あの…
ぼくお友達ができたの初めてだから
あそびかたなんにもしらないんだ…。」






つきはしょんぼり下をむいて、
しょうじきにはなしました。



悲しい気持ちがふくれあがって、
ほっぺたをつたって下に落ちていきました。
女の子は一滴だけのおおきな雨粒をよけました。





「あんた、泣いてるの?」

「だって、もう一緒に遊んでもらえないから…」
つきははなみずをずびびびとすすりました。



「あんたって、本当になんにもしらないのね」
女の子はあきれたように腕を組みました。

「お友達って、そんなに簡単に
あんたを嫌いになったりしないわよ。
知らないなら教えてあげればいいんだから。」




「…教えてくれるの?」
「教えてあげるわ。だってお友達ですもの。」

つきは泣くのをやめました。

でもそのかわり、うれしい気持ちが
じんわりじんわりわいてきて、
やっぱり、泣いてしまいました。

「あなたまだ泣いてるの?」

「だってうれしいんだもの!」
つきはまたずびびびと鼻をすすりました。





「ちょっと待って!」
女の子は滑り台からおりて、 ジャングルジムへのぼって、
つきのすぐそばまでやってきました。
女の子はハンカチを取り出して、
月の鼻に押し当てました。

「ちーんってするのよ。」

つきは女の子に教えてもらって、
ちーんと鼻をかみました。










【こぼれ話】
月と影というモチーフを思いついて、
本当は恋愛物を書くつもりだったのがこんなことに…。
そのうち再チャレンジしたいもんです。




モドル



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